東京brary日乗

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靉光と緑陰の休日

brary2007-05-03

げにすばらしい新緑の休日、都心を走るチャンスである。黒パンに卵とチーズとピクルスをはさんでサンドウィッチをつくり、よい紅茶をポットに詰めて、国立近代美術館で開催中の靉光展にゆく。東京ではさまざまな展覧会が開催中だが、靉光に人々が殺到することはないと思われた。自転車をひきながら守衛さんに停める場所をきこうとしたら、どうぞこちらへと案内してくれた。守衛さんはみな親切である。


混んでいない会場で靉光をみる。中期の馬の大作をみて、絵についてそれまで考えなかったことを考えた。絵は本当はカンバス一枚の厚さしかない。最初は白い。そこにどのようなものを描くことも描かないこともできる。靉光の馬はしかしそこにいて、画家というものはただの白い平面にそのような何かをつくるのである。
そして今まで見たことのない晩年の作品の色彩は、美しいあまり離れがたい。どれもが中間色で、ねっとりした絵具をいとおしむように混ぜ合わせ、塗布している。彼は戦地で病を得、38歳のとき上海の病院で逝去しているので、晩年とは昭和18、9年、画家は30代半ばであった。


昼食とともに緑陰の読書を楽しむはずの日比谷公園は、右翼の街宣車隊と憲法改正反対デモにはさまれ、中央では「勤労者によるジャズ」も行われていたので諦め、隅田川に戻って河岸の桜の下のベンチで静かな緑陰のひとときを楽しむ。蜂出現のため、途中断念せざるを得なかったのが返す返すも残念である。