東京brary日乗

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菅野の記

brary2007-05-05

9時ごろには家事全般を済ませ、都営地下鉄本八幡にゆく。散策するのは線路の北側だが、まず南側に位置するメディアパーク市川をめざした。歩いた道は南八幡商店会といい、とても好ましい。入口付近には、店の許容量を明らかに超えた陳列からなる手芸店もある。最後の方は自転車すらすれ違えないぐらい狭いのに、まゆ玉のようなもので商店会であることを主張してやめない。
メディアパーク市川とは、中央図書館建替え時にできたと思われる、新たな複合施設をいうのだった。映像センター、生涯学習センターなどがある。中央図書館はすばらしい設備である。初めての図書館の場合、「演芸」コーナーで充実度を判断しているから蔵書の全容はわからないが、区分にも工夫が凝らされている。韓国語の図書を多く所蔵し、韓国の電子ライブラリーをみることもできる。ピロティには本を積み上げた10メートルぐらいある銀色のオブジェが立っていた。


メディアパーク3階の文学プラザにゆくと文学地図があったのでもらった(訪問の目的)。露伴先生と荷風先生には思いを馳せたい。故山本夏彦翁にも敬意を表したいと思ったら、山本邸は歩いてきた南八幡にあったことを文学プラザのパネルで知る。正岡容も真間に住んでいたのであった。


商店会を途中で右折してガードをくぐり、駅北に出て京成八幡から菅野を散策。とくに住宅街をゆくときは、いかにもウォーキングという軽装をしないよう心がけているので、日傘を差してゆるゆる歩く。八幡小学校の前には、とてもすてきな文具店がある。紙粘土かなわとびなど買いたい気持ちである。八幡から菅野一体には、東京都内の元郊外からもあらかた失われてしまった、成熟した郊外の得がたい風情がある。商店街からも、人々がどのようにこの町をつくってきたのかがうかがい知れる。ほんとうに久々に、住みたいと思う町である。道はあちらこちらで蛇行して、行く先を楽しませる。細い道の途中には「警告 軽自動車しか通れません」とあるが、途中でそんなことを言われても引き返すのは大変であり、わたしの運転技術ならば軽自動車も通れる保障は全くない。


菅野蝸牛庵はこのあたりだったかと考えながら詮索せずに、松林の間から菅野駅に出た。昼食をとりたいが店はすべて閉まっていたので、心ひかれる菅野駅から京成電車をひとつ乗って市川真間にゆくことにした。真間の商店街で店頭の雑誌がすぐれている古書店にひっかかる。よい書店なので、知る人には有名かもしれない。店名がないが、のちに調べたところでは青山堂に間違いないと思われる。真間や八幡にはいい古書店が多いことも知り、市川の友を訪ねる際に再訪せねばならぬ。買った本(大月隆寛『厩舎物語』ちくま文庫)を読みながらカレー南蛮蕎麦を食べて帰る。