小犬とあなた
阿久悠『愛すべき名歌たち』(岩波新書)は大変に興味深い。ベストセラーであるとか流行歌であるとかの本は、たとえば新聞記者などが書くと年表エッセイのようになって存外面白くないものだが、この本には阿久悠がいる。
- 作者: 阿久悠
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1999/07/19
- メディア: 新書
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たとえば小坂明子の大ヒット曲「あなた」は、"翔んでる女"の逆転として小市民的な家庭のイメージが共有されたものである、という文脈で引き合いに出されることが多かったのではないかと思うが、阿久悠が衝撃を受けたのは、「あなた」=男が「白いパンジー」や「小犬」と同格になったという点である。翔んでる女は家庭に回帰したのではなく、ウーマンリブをいきなり超越したのである。
卓見といわずして何と言おうか。