東京brary日乗

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針箱

brary2007-09-11

生駒山の家から裁縫箱をもらってきた。
気に入るのがなくて、三原堂の最中の箱で間に合わせていた。これはこれで、蓋に糸くずを捨てられたりして便利がいい。生駒山の裁縫箱は使いやすそうだが、狭い家には大きいし、比較的新しくて平凡なものである。抽斗もややひっかかる。しかしその中に、こころ惹かれるものがあった。抽斗はやすりと蝋をかければ直ると見た。


針箱というものには「娘時代」が残りがちである。郊外の家には、主の干支である犬のマークがついた小さな針入れがある。わたしの最中の箱にも、小学校の時使ったへらや糸が未だにある。
生駒山の裁縫箱には、今では手に入らない象牙の鈎針と、花模様のエボナイトの石鹸箱と、黒くて楕円形をした、ブリキの浅田飴の缶がしまわれていた。中には半端なボタンとかぎホックが入っていた。
この裁縫道具の持ち主は義姉たちにとって二人目の母だが、わたしには唯一の姑であった。ささいな仕事をおろそかにしない、見事な日常を営む人であった。