東京brary日乗

旧はてなダイアリー「東京brary日乗」から移行しました。2019/2/28

誰かがカウンターの中で

郊外の家から帰り、番町にある女子大の図書館にゆく。依頼した資料は用意されていて、「二階の、窓際のスペースのどこでも空いているところをお使いください」ということなので、12冊あるのを抱えて二階にあがると、奥に素晴しい閲覧スペースがあった。
番町は静かな屋敷町である。広い窓からは、向かいにある小学校の校庭の緑が見える。学校の時計も、ちょうどいいところに見える。ニスのかかったぶあついテーブルに、赤いピーチスキンを張った椅子がゆったり並べられている。


そして、それらのスペースはどこも空いていた。誰もいないからである。窓拭きの人以外に人影のない、大変清潔で気持ちのよいスペースで、信じられないほど作業がはかどる。コピー機は一台しかないが、必要なものを思い切って複写することもできる。
午後になってもあまり状況の変化がない。心地よくて全く疲れないので、気がついたら水も飲まずに5時間あまりが経過していた。明日も続きをすることにして、大量のコピーと12冊の本を持ってカウンターにゆくと、快く取り置きを了解してくださった。


帰る荷物を整えていると、カウンターにいたもうひとりの方から名を呼ばれた。「ですよね?」
今からちょうど一年前、江戸東京博物館の図書室の司書さんに声をかけられて、眼鏡をとったら幼なじみだった(9月3日)。今日、やはり眼鏡をとった人は、かつての年下の同僚であり、私はまた図書館のカウンターで、思いがけなく発見されてしまうのである。