東京brary日乗

旧はてなダイアリー「東京brary日乗」から移行しました。2019/2/28

チェリー餡

打ち合わせのため仕事に行くと、弁護士の先生(とてもよいおじい様)が『播磨坂』という最中があったから、といって持ってきてくださった。花見がお好きらしい。桜の花びらの形をした最中は「チェリー餡」である。


『平凡』の「私」は居候先の遠縁の娘(大して器量はよくない)に恋をしている。二人で芋を食べた。

「貴方、御飯が喰べられて?私何ぼ何でも喰べられなかつたわ。余り先刻詰込んだもんだから」
と微笑する。何時見ても綺麗な歯並だ。
 私も矢張り莞爾して、
「私も喰べられませんでした・・・」
大嘘!實は平生の通り五杯喰べたので。
雪江さんは國生れでも東京育ちだから、
「・・・にもお芋が有つて?」
「有りますとも。」
「ぢや、帰つても不自由はないわねえ。」
と又微笑する。私も高笑いした。
二葉亭四迷『平凡』92頁)


♪猫の夜会ライブラリー舞台部更新しました。鈴本特別興行
http://library.cocolog-nifty.com/theater/2006/04/20060717_8258.html