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缶詰百科

図書館のリサイクルでもらってきた『缶詰百科』は、寝る前のひとときを癒す友となっている。モラヴィアの評論集を諦めてもらってきた甲斐があった。
柴田書店の「味覚選書」というシリーズの一巻だが、カバーの見返しには「あなたの求める趣味、教養、実用を満たします」と書いてあって、万能の選書であることがわかる。


『缶詰百科』によると、缶詰はナポレオンが戦争に行くにあたって携帯できる保存食を募集し、ニコラ・アッペールが発明した製法がはじめとされる。アッペールは褒美として2000フランをもらって缶詰工場をたて、1976年現在その工場は存続している。しかし、缶詰が本格化する前にナポレオンは負けてしまい、著者の浅見氏はもう少し早く缶詰が発明されていれば、歴史は変わったかもしれないと言っている。


日本では、明治4年に松田という人が作ったという説が有力である。西南戦争のときすでに軍納された。明治十四年の内国勧業博覧会にも各地物産による缶詰が出品された。
ふしぎなものもある。
秋田県 鰤 はたはた たこ ひばり 白鳥
東京府 うみがめ にんじん 大根 野椰子
新潟県 蒲鉾


ところでわたしは缶詰が好きである。これは、親が戦後、米軍の放出物資である缶詰に感動した世代であるために、しばしばそういうもの(ウインナ、コンビーフ、アスパラガス、鮭缶、オイルサーディンなど)が食卓にのぼったせいに違いないが、『缶詰百科』には缶詰を用いた料理も載っている。自慢だが、私は幼稚園のときから既に、「鮭缶のおいしい部位」について詳しい。
今、巷ではあまり缶詰を見ない。ホワイトアスパラなどは死滅寸前にある。しかし、『缶詰百科』の裏側をみると、実にたくさんの人々が借りた形跡がある。