東京brary日乗

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街道をあるく

brary2008-09-17

心身の大不振を何とかする第四弾(寝る、とても軽い読書、養命酒につづく)として、遠足した。二時ごろ家を出る。私としては例外的に遅いスタートだが、時間感覚を正常に戻す必要もある。


本郷三丁目から駒込方面に本郷通りを北上。本郷通りの醍醐味は、本郷を過ぎた追分あたりから始まる。追分は岩槻街道中山道の分岐であって、税務署に行く道が中山道になる。追分には朝日堂というパン屋があるが、本郷通り明月堂を端緒としてこのような古典的な自営パン店が大変多く、その点でも魅力に満ちる。
パン屋ではないが、白山には南天堂がある(本屋)。持ってきた『雀師流転』を読み終えてしまいそうなので寄ったら、『東京人』の表紙に阿佐田哲也その人がいた。アウトロー特集。『東京人』の新たなる展開。駒込は寺が多いため、南天堂の場合『寺門興隆』(旧月刊住職)が複数並べてある。


本郷通りを街道らしくしていた大きな理由は、駒込吉祥寺と生花市場だったが、生花市場はもうない。地下鉄が通ればマンションの建つ道理がある。しかし、吉祥寺はもちろん健在であり、すぎて右をみれば、愛宕山のトンネルを思わせるような天祖神社がある。そこには「駒込神明町」という札が立っていて、その音の響きはたちまち古今亭志ん朝の声である(志ん朝駒込神明町で生まれたので)。天祖神社はコンクリートだが、鎮守様然としている。町会別の神輿蔵がならぶ。砂利などはなくて、土が美しく掃き清められているが、外のポスターによれば、昨日まで祭礼であった。


駒込から中里に出る。実は、本日の目的地は田端である。私は田端を秘密裡に愛する者だが、田端に用事がある、ということはまずないので、出向かないと散策できないから来た。中里はやや切ない感じのする落ち着いた町で、切ない感じは崖の下に田端の操車場と変電所があるためである。聖学院と田端中を結ぶ地点(中里三丁目交差点付近)では、前も後ろも線路、という不思議なことが起きる。「前」には取り壊しつつあるJRの低層社宅がある。人のすまなくなった社宅には、必ず白粉花が咲いている。
「後ろ」の陸橋を渡って高台通りを西日暮里方面にゆくと、どういう構造でそこにあるのかわからない陸橋があり、その先にはとても小さな、しかし胸をうつ桜並木がある。田端から道灌山に出る道は、どれも少しずつ違うよさがある。
今日は向陵稲荷坂を下り、よみせ通りから千駄木に出てバスで帰る。