東京brary日乗

旧はてなダイアリー「東京brary日乗」から移行しました。2019/2/28

巨匠とマルガリータ

家人の恩師が亡くなり、お通夜と葬儀に参列した。ご家族がたまたまお留守の間に、突然身罷られたのである。二年前に退官なさったが、前日も学生と酒宴を共にされた。十数年前に駿河台のホテルで媒酌をしていただき、家人がロシア人になったりローマ人になったりしている間も、果物をお送りしたり、お手紙をかいたりしていた。先生はロシア文学者だが、わたしが学校に行っているのも面白がってくださったので、最近ちょっとご報告をしたところであった。


白菊の花弁を持って、棺の中の先生にお別れを申し上げるとき、わたしの前に並んでいた体格のよい男の人が、声にならない声で「先生!」とうめき、絶句した。先生のお顔は記憶にあるより白く小さく、絶句した人は多くの人の代表のように、先生を尊敬し、悲しい。