東京brary日乗

旧はてなダイアリー「東京brary日乗」から移行しました。2019/2/28

そして船場 その1

山崎を離れて大阪に着くと、雨が降り始めていた。中之島近くのホテルに荷物を置いて、南船場散策に出る。

かつて(明治時代)、長堀通以北の心斎橋筋にはたくさんの本屋があり、松屋町にはもう少しくだけた本屋があった。こういう本屋は、自分で出したり人のを出したり、卸や小売をした。そういうもののわずかな痕跡を探す、ということを大阪にくるたびにしている。本屋の多くは、新町・阿波座に移転した。新町にある取次・大阪屋には古い建物が残るが、もとは演舞場だったのであって、本とは関係がない。調査をはじめるのは明らかに遅くて、もう少し前ならば残っていたものもあったかもしれない。しかしどうなるものでもないから、想像力を駆使して歩く。


雨の日曜日、町はひっそりして明らかに景気が悪い。

長堀通りを松屋町まで行くころには本降りになっていて、折りよくみつけたアーケードは、久宝寺町の問屋街であった。日本橋横山町あたりに似ているが、袋物だとかの小さな店が連なる。こうした町の例に漏れず、ところどころ歯抜けになっている。間口が小さいのに、奥行きはとても奥くて古い商家のつくりを遺しているが、まとまってあいたところには最近流行のデコラティブなマンションが建つ。


それでも船場は大きな問屋街で、小さな商いも厳しいとはいえ街なかにある。こういうところに来るとなぜこんなに胸騒ぎがするのか、自分でも本当にわからないが、もしかしたら前世は丁稚奉公でもしていて、手代ぐらいまでいったのかもしれない。
北浜まで来たところで雨脚が強くなったので、新しく開通した中之島線を二駅乗ってもどる。