東京brary日乗

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いざ、大山崎 その1

brary2009-02-22

九時の新幹線に乗り、京都で乗り換えて山崎で降りる。いよいよアサヒビール大山崎山荘美術館にゆくのである。大山崎山荘では山口晃の展覧会が行われていて、ここまで来たからには、もはやわたしは彼の追っかけと自称してよいかもしれない。土地勘がないので、山崎とはどんな山奥かと思っていた(失礼)が、京都駅からわずか15分、河原町に出るのと変わらない。


しかしわずか15分で風景は劇的にかわる。山崎駅は天王山のふもとにあり、山裾に沿って東海道線の線路が走る。山里には似合いの梅が、そこここで花をつける。踏切を渡って、すこぶる傾斜のきつい天王山をのぼった先に大山崎山荘はあるので、まず紙魚子さんに教えていただいたとおり、駅前の小さなホテルのカフェで腹ごしらえをした。


大山崎山荘の持ち主が日本の民芸運動パトロンであったことは、「アーツアンドクラフツ展」で偶然学習したばかりである。けれども場所というのは、実際に訪れてみないとわからない。住まいを公開したり展示館にしたりした例は少なくないけれども、ここに漂うのは、滅多にないような感じのよさであった。


美術館にしたのに、元のたたずまいがほとんど損なわれていない印象がある。建物にはほとんど手が加えられておらず、普通は公開されないバスルームもきれいに保存されていて、つい最近まで丁寧に使われていたことがしのばれる。部屋の大きさや天井の高さがちょうどよく、重厚だが同時にかろやかで、質実なあたたかさがある。趣味はよいが、押し付けがましさがない。内装の雰囲気などからいえば、かつての駿河台・山の上ホテル本館にかなり近いかもしれない。


このようなすてきな大山崎山荘には、安藤忠雄設計による新館がついている。新館には目玉コレクションのクロード・モネが収蔵されている。コンクリートを打ちっぱなしにした細長い建物で、両側から階段を下りると入口がある。「地中の宝石箱」という名前がついているが、実際には、さながら蟻地獄に降りてゆくような心持ちがしないでもない。さらに、それはわたしが最近通っている学校のニュー建物とまったく同じ構造(設計者が同じだから)なので、天王山の心休まる山荘から一気に「学校」モードとなって迷惑した。

新館には、警備員がいる。山口晃の作品は警備しないが、クロード・モネは警備しているものと考えられる。
展覧会のレビューはこちらhttp://brary.exblog.jp/10400477/